100人に1人が無料のからくり

ここ最近は実施されていないようですが、一昔前のビックカメラでは“100人に1人の割合で買い物金額が無料”というキャンペーンを行っていました。テレビCMでも宣伝していたので覚えてる方も多いかと思います。レシートに当たりと出ていれば一円も払わずとも商品が自分のものとなるのです。一見太っ腹に思えるこのキャンペーンですが、実際のところは本当にそうだったのでしょうか?当時の私は、100人に1人の合計金額が、例えば100万円であるかもしれないし、1,000円かもしれないし、店側の儲けは運によって左右されてしまうのではないか、と思っていました。

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1%割引

結論から言ってしまうと、この“100人に1人が無料”は、”1%割引”をお客さん全員に対して適用するのとほぼ同じこととなります。

わかりやすく説明するため、具体的に10人のお客さんに全員10%割引きを適用するケースを考えてみましょう(表1参照)。ここで一つ注意しなくてはならないのは、分母が100人ではなく10人で考えるので、10人の内1人を無料にするには1%ではなく10%割引にする必要があるということです。下記の例では、10人がばらばらの価格の商品を買っており、10人の合計金額は5,500円です。このとき、10人全てに10%割引を適用すると、合計金額は4,950円となります。また、1人当たりの平均価格は550円となり、1人が無料になるとき、これを合計金額から引くと同じく4,950円になります。

平均価格を考えるのではなく、最高価格や最低価格だったら同じにならないではないかという疑問が当然出てくると思いますが、1人当たりの価格にばらつきがあったとしても、分母が大きくなっていけば平均価格に近付いていくため、“1%割引”とほぼ同じであると言うことができます。実は、景品表示法による規制で10万円以上はこのキャンペーンの対象外となるらしく、1~10万円の範囲で、なおかつ、ビックカメラほどの大型チェーンなら多くのお客さんが買い物をするわけですし、平均価格は理論値にある程度近づくはずでしょう。

表1 サンプル例

価格 価格(10%割引)
Aさん 100 90
Bさん 200 180
Cさん 300 270
Dさん 400 360
Eさん 500 450
Fさん 600 540
Gさん 700 630
Hさん 800 720
Iさん 900 810
Jさん 1000 900
合計金額 5500 4950

まとめ

“100人に1人が無料”と言われるとお得で魅力的だと感じますが、”1%割引”ではあまり魅力的とは言えません。この2つどちらでも店側の利益はほぼ変わらず、むしろ”100人に1人が無料”の場合、99人は何の割引も得ることができないため、”1%割引”の方が99人にとっては少しでもお得になります。しかし、魅力的で購買意欲を刺激するのは、言うまでもなく前者なわけで、うまいことを考える人がいたものです。 当たり前と言えばそれまでですが、少し頭をひねらないとこのからくりには気づきにくいのではないでしょうか?
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